法定雇用率2.7%時代到来!障害者の一般就労に向けたチャンスと課題

厚生労働省動画のスクリーンショット
厚生労働省のYouTube「【障害者法定雇用率】令和8年7月から2.7%に引き上げになります。

2026年7月1日から、民間企業に求められる障害者の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。これにより、障害者雇用の義務がある企業の範囲も、従業員40人以上から37.5人以上へと広がりました。
厚生労働省:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について(PDF)
厚生労働省:【障害者法定雇用率】令和8年7月から2.7%に引き上げになります(動画YouTube)

障がいのある方が働く機会を広げていくことは、インクルーシブな社会をつくるうえで、とても大切な取り組みです。一方で、法定雇用率を達成している企業は半数に満たないという現実もあります。

今回の法定雇用率の引き上げは、単に「障がい者を何人雇用するか」という話ではありません。企業側、働く当事者である障がいのある方、そして支援者側が、それぞれ何を改善していくべきかを考える大きなきっかけだと感じています。

障がい者雇用は「数」だけで考えてはいけない

法定雇用率が上がると、企業にとっては雇用すべき人数が増えます。そのため、どうしても「雇用率を達成すること」が目的になってしまうことがあります。

しかし、本来大切なのは、雇用率という数字を満たすことだけではありません。その人がどのような仕事を担い、どのような価値を会社や社会に提供できるのか。その人の特性や能力に合わせて、どのように働く場をつくっていくのか。そこに障がい者雇用の本質があると思います。

障がい者だから雇用する。障がい者だから任せられる仕事が限られる。そうした考え方ではなく、障がいの有無にかかわらず、一人ひとりの仕事内容や成果に応じて雇用され、対価が支払われていく社会が望ましいのではないでしょうか。

企業側に求められる改善

私は障がいのある方を支援する立場にいますが、同時に企業を運営する立場でもあります。そのため、企業運営の厳しさも理解しています。

企業には、売上、人件費、教育コスト、業務効率、顧客への責任など、日々多くの現実があります。だからこそ、「雇用率が上がったのだから、もっと雇用してください」と言うだけでは、現場はなかなか動きません。

企業側にまず必要なのは、社内の業務を見直すことです。会社の中には、専門職でなくても担える業務、毎日発生しているが後回しになっている業務、手順を整えれば任せられる業務が数多くあります。

そうした仕事を丁寧に切り出し、マニュアル化し、本人の特性に合わせて任せられる形に整えることで、障がいのある方が力を発揮できる場は広がります。

また、採用して終わりではなく、職場に定着できる環境づくりも必要です。指示をわかりやすくすること、相談しやすい体制をつくること、体調や特性に配慮すること、業務の優先順位を明確にすること。これらは障がい者雇用だけのためではなく、すべての従業員にとって働きやすい職場づくりにもつながります。

当事者である障がいのある方に大切なこと

一方で、障がいのある方自身にも、自分の可能性を広げていくための努力や学びの機会が大切です。

もちろん、障がいの状況は一人ひとり異なります。寝たきりの方、外に出ることが難しい方、日々の生活そのものに大きな支援が必要な方もいます。仕事だけが自律や自立ではありません。

大切なのは、その人に合った目標を持つことです。働くことを目指す人もいれば、生活リズムを整えることが目標の人もいます。人との関わりを少しずつ増やすことが目標の人もいます。それぞれの状況に応じた成長があってよいと思います。

そのうえで、働くことを目指す方には、自分を知る力が必要です。自分は何が得意なのか。どのような環境なら力を発揮しやすいのか。どのような配慮があれば働き続けられるのか。そして、自分は仕事や会社にどのような付加価値を与えられるのか。

障がい者雇用という制度に甘んじるのではなく、障がいの有無にかかわらず、スキルを身につけ、必要とされる人材になる努力を続けることは、とても大切だと考えています。

支援者側に求められる役割

支援者側にも、大きな役割があります。

支援者は、ただ企業に対して「障がい者を雇用してください」とお願いするだけでは不十分です。企業がどのような業務で困っているのか、どのような人材を必要としているのかを理解する必要があります。

そのうえで、本人の特性、スキル、希望、配慮事項を整理し、企業の業務と結びつけていくことが支援者の大切な役割です。

また、働く前の訓練だけでなく、働いた後の定着支援も重要です。企業と本人の間に入り、必要な調整を行うこと。本人が困ったときに相談できる関係をつくること。企業側にも、障がい特性や関わり方について伝えていくこと。

障がい者雇用を本当に意味のあるものにするためには、企業、当事者、支援者がそれぞれの立場で学び続ける必要があります。

「雇用すること」ではなく「活躍できること」を目指す

障がい者雇用において重要なのは、雇用すること自体をゴールにしないことです。

雇用された後に、本人がやりがいを感じられるか。仕事を通じて成長できるか。会社にとっても必要な存在になっていけるか。そこまで考えていくことが、本当の意味での障がい者雇用だと思います。

企業にとって、障がい者雇用は負担だけではありません。業務を見直すきっかけになり、職場の理解が進み、多様な人が働ける環境づくりにもつながります。

人手不足が進む中で、多様な人材が力を発揮できる会社は、これからますます重要になっていきます。障がいのある方が働きやすい職場は、子育て中の人、介護をしている人、体調に不安がある人など、多くの人にとっても働きやすい職場になるはずです。

インクルーシブな社会に向けて

法定雇用率2.7%への引き上げは、企業にとって負担として受け止められる面もあるかもしれません。しかし、これを単なる義務として終わらせるのではなく、多様な人が力を発揮できる社会をつくるきっかけにしていくことが大切です。

障がいがある人も、ない人も、それぞれが自分を知り、学び、誰かの役に立てる力を磨いていく。そして、必要なときには支えられ、また別の場面では誰かを支える側にもなる。

そのような社会こそ、私たちが目指すべきインクルーシブな社会ではないでしょうか。

仕事だけが自律や自立ではありません。しかし、仕事を通じて自分の価値を感じられる人が増えることは、その人の人生にとって大きな意味を持ちます。

企業側、当事者側、支援者側がそれぞれ改善し、歩み寄り、学び続けること。そこから、障がい者雇用は単なる制度ではなく、人と企業、そして社会をより良くしていく取り組みになっていくのだと思います。

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