
「パソコンやAIを学べる事業所なのに、なぜ手作業もするのですか?」
つなぐコミュニティーズの取り組みを知った方から、このようなご質問をいただくことがあります。
「就職を目指すなら、PC操作やWeb制作、データ入力などの専門スキルに特化した方がいいのでは?」と思われるかもしれません。封入や袋詰め、検品といった手作業は、一見するとIT・PC仕事への就職とはあまり関係がないように見えますよね。
しかし、私たちは手作業をとても大切にしています。
なぜなら、手作業の中には、職種を問わず求められる「働くための基本動作」が数多く詰まっているからです。
手作業は、単に「手を動かすだけ」ではない
例えば、決められた数の商品を袋に詰める作業があるとします。
一見するとシンプルな作業に見えますが、実際におこなうためには多くの力が必要です。
- 作業の説明を正しく聞く
- 手順を理解し、分からない部分を確認する
- 決められた数を間違えずに入れ、品質をそろえる
- 一定時間集中し、ミスがあれば報告・修正する
- 作業終了を伝え、周囲と協力する
これらは軽作業だけでなく、事務職、接客業、PCを使うIT業務であっても全く同じように求められる力です。
専門スキルが違っても、仕事を進める根本のルールは変わりません。手作業は、その「共通する土台」を実際の作業を通して確認し、身体で覚えることができる大切な訓練なのです。
パソコンが得意でも、「仕事ができる」とは限らない
どれだけ高い専門スキルを持っていても、自分のやり方だけで進めてしまったり、困ったときに相談できなかったりすると、職場で安定して成果を出すことは難しくなります。
手作業は専門知識の差が出にくい分、「指示の聞き方」「報告のタイミング」「困ったときの対応」といった基本的な働き方がクリアに見えやすいという特徴があります。
また手作業を通して、気づいていなかった自分自身の「強み」が見えてくることも少なくありません。
- 「一つひとつ出来栄えを丁寧に確認できる」
- 「一定の品質を保ちながらコツコツ継続できる」
- 「わからないことやうまくいかない作業を質問できる」
- 「周囲の様子を見て、自然にフォローができる」
支援者が「丁寧ですね」「工夫できていますね」と具体的にフィードバックすることで、失っていた自信を取り戻し、「自分にもできることがある」と実感していただけます。
経験を重ねて「自分で選ぶ」ための材料にする
第2話でお話ししたとおり、つなぐコミュニティーズでは「意思決定支援」を軸に置いています。
支援者が一方的に「あなたにはこの仕事が向いています」と決めるのではなく、実際にさまざまな作業を経験し、一緒に振り返るプロセスを大切にしています。
- 「細かい作業は集中できて好きだった」
- 「手順が明確だと安心して進められる」
- 「一人で集中するより、人と協力する作業が楽しかった」
こうした実戦での気づきこそが、自分で納得して次の目標を決めるための大切な材料になります。
相談と訓練をつなぎ、6名の就職成果へ
作業の中で見えてきた「手ごたえ」や「課題」は、そのまま個別面談や相談支援につなげます。
なぜ失敗したのか、どんなサポート(手順書など)があればやりやすくなるのかを一緒に整理し、次の訓練に反映させる。この「一気通貫の支援」があるからこそ、本人に合った働き方や必要な配慮が明確になっていきます。
今年度就職が決まった6名の利用者さんも、単にPCスキルだけを高めたわけではありません。
手作業やPC作業を通じた小さな積み重ねによって自分自身を理解し、納得して「働いてみよう」と自分で決断した結果です。
次回予告:第4話
就職に向けた最重要テーマ「健康と生活管理」
どれだけ働きたい気持ちや高いスキルがあっても、生活の土台が不安定なままでは本来の力を発揮できません。
次回は、すべての「働く力」の土台となる健康や生活リズムの整え方についてお話しします。どうぞお楽しみに!
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