【うっかりさんとしんちょーさんの優しいカフェ巡り】

tsunagu column

第1回:時の流れを味わうネルドリップ ― 福岡・藤崎「かうひい屋」

福岡・藤崎駅から歩いて数分。人通りの多い通り沿いに、そっと佇む一軒のカフェがあります。

その名は「かうひい屋」。創業から約30年。穏やかな時間の流れと共に、この場所に根づいてきた老舗の喫茶店です。

今回、うっかりさんと私は、この落ち着いた空間を訪ねてみました。

ガラスの外から、やさしさが

通り沿いに見えるガラス張りの外観は、やわらかな曲線を描き、どこか懐かしさを感じさせる佇まい。

その前に立ったわたし(しんちょーさん)は、少し緊張しましたが、扉を開けるとすぐに瓶に詰められた焙煎豆や麻袋が視界に入り、ふっと気持ちが和らぎました。

私は店内のテーブル席に案内され、ふと目に留まったのは、テーブルの上にそっと置かれたヘレンドのシュガーポット。派手すぎず、でも気品のあるその姿に、この店の細やかな美意識が感じられました。

一杯ずつ、心を込めて ― 店主こだわりのネルドリップ

「かうひい屋」では、店主自らが丁寧にネルドリップで淹れてくれるのが魅力。

今回はシングルオリジンのコーヒーを4種、飲み比べてみることに。

• トラジャ:重厚なコクとしっかりとした味わいの中に、飲み終わりのやわらかな清涼感。深い森に差し込む光のような印象。

• ケニア:軽やかな酸味が心地よく、蒸し暑い夏の日にぴったりのすっきりとした味わい。

• グアテマラ:穏やかな苦味とふくらみのある甘みが、ゆっくりと心にしみ込んでいくよう。

• エチオピア・モカ:華やかでフルーティーな香りが広がり、五感をくすぐるエレガントな一杯。

うっかりさんは、もちろんスイーツも忘れません。プリンとブルーベリーチーズケーキを注文。

人気のプリンは、なんと残り1つを見事にゲット。うれしそうなその姿が、なんとも微笑ましくわたしも心の中でやった!とつぶやきました。

プリンはしっかりとした甘みの中に、どこか懐かしさを感じさせる味。カラメルの香ばしさと、なめらかなカスタードのバランスが見事で、まるで昭和の空気に包まれるような一品でした。

豆と空間に込められた、店主の想い

コーヒー豆は南米、東南アジア、アフリカなど、世界各地から選び抜かれたもの。

オーガニックの豆も扱っており、身体にも心にもやさしいラインナップです。

テイクアウト用の焙煎豆も種類豊富で、眺めているだけであっという間に時間が過ぎていきそうです。

豆を眺めるうっかりさんの背中を見ながら、私はそれを静かに見守っていました。

店内にはアンティークの家具や小物が丁寧に配されており、コーヒーカップもお客さんによって一つひとつ異なるものを使用しているのだそう。

私たちのカップも、ゆったりとした大ぶりのもので、惜しみなく注がれたコーヒーの湯気が優しく揺れていました。

中でも印象に残ったのは、200年前の手回しコーヒーミル。時の重みを感じさせるその佇まいに、店主のコーヒーへの深い愛情と探究心がにじみ出ているように思えました。

また、ひとつやさしい記憶が増えました

ふたりで楽しく過ごした午後。

コーヒーと空間にゆっくりと包まれて、日々の慌ただしさが少しずつほどけていくのを感じました。

うっかりさんが「また来ようね」とぽつりと言ったその言葉に、私もうなずきながら、心の中で小さな記憶の引き出しにこのひとときをしまいました。

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