
「時間を守りましょう」
働く場で、当たり前のように言われる言葉です。
しかし就労支援の現場で大切なのは、単に遅刻を注意することではありません。
「なぜ時間を守る必要があるのか」
「それが自分の仕事や周囲の人とどうつながっているのか」
その意味を本人と一緒に理解し、行動として身につけていくことが重要です。
つなぐコミュニティーズでは、時間を守ることをルールではなく「人との信頼を守るための基本的な労働習慣」と考えています。
時間は、自分だけのものではない
例えば、午前10時から作業を始める予定だったとします。
一人で完結する作業に見えても、実際には準備をする職員、一緒に作業する利用者さん、完成を待つ取引先がいます。
自分が遅れることで、他の人の予定や作業にも影響が出てしまうもの。仕事の多くは、誰かが準備し、確認し、次の工程を引き継ぐことで成り立っています。
時間を守ることは、自分自身のためだけでなく「相手の時間を大切にし、仕事のつながりを止めないための行動」なのです。
遅刻をしないことだけが、時間管理ではない
基本的労働習慣としての時間管理には、さまざまな行動が含まれます。
- 決められた時間に通所する / 休憩時間でしっかり休む
- 作業開始までに準備を終え、締切や進み具合を意識する
- 遅れそうなときに早めに連絡する / 予定変更を相談する
大切なのは、いつも完璧でいることではありません。体調や交通事情で遅れることもあります。
そんなときに「遅れそうです」「到着が遅くなります」と早めに伝えられることが重要です。時間管理とは、遅れない能力だけでなく「予定通りに進まないときに適切に対応する力」でもあります。
遅刻の背景を一緒に考える
遅刻が続くと「やる気がない」と受け取られがちですが、実際には様々な背景が存在します。
- 夜眠れず朝起きられない、薬の影響で強い眠気がある
- 出かける準備の順序立てや、時間の見通しを立てるのが苦手
- 交通機関や外出前に強い不安を感じる、体調が悪くなる
- 遅刻を責められるのが怖く、連絡できない
こうした事情を確認せずに注意するだけでは、行動は変わりません。
つなぐコミュニティーズでは、遅刻という結果だけを見るのではなく、朝の流れや困っている場面を整理し「どうすれば間に合いやすくなるか」を本人と一緒に考えていきます。
小さな工夫を、実際の訓練につなげる
支援の中で、その人に合った工夫を試していきます。
- 朝の準備に時間がかかる: 前日のうちに服や持ち物を準備する
- 時間の感覚がつかみにくい: 逆算して予定を立てる / アラームの活用 / 一つの作業にかかる時間を記録する
- 連絡が苦手: 実際に使える短い連絡文を一緒に作成しておく
例:「体調不良のため、到着が30分ほど遅れる予定です。ご迷惑をおかけします。」
定型文を準備しておくだけで、いざという時に連絡しやすくなります。大切なのは支援者が管理し続けることではなく、本人が自分で時間を調整できるようになることです。
「できた」体験が、自信を育てる
「自分は時間を守れない」と思い込んでいる人も、いきなり毎日完璧を目指す必要はありません。
まずは週1日の通所から始め、週2日、午前中の安定通所、遅れる前の連絡……と、小さな目標を積み重ねます。そして「今日は予定通り出発できましたね」「先月より安定していますね」と具体的に振り返り、「自分にもできる」という感覚を育てていきます。
また、手作業の訓練でも「品質を保ちながらペースを意識する」「終わらない場合にいつ相談するか」といった時間管理の実践を行っています。
相談と訓練をつなぎ、就職へ
つなぐコミュニティーズでは、時間管理を個人の努力だけに任せません。生活状況を整理して訓練に反映し、変化を一緒に振り返ります。
今年度、すでに6名の就職が決まりました
2026年度に入り、就職が決まった6名の方々も、最初から完璧だったわけではありません。
日々の通所や連絡、相談といった「小さな約束」を重ね、働くための信頼を育ててきました。
専門スキルだけでなく、毎日の積み重ねで築いた信頼が就職という成果につながっています。
時間を守ることは、相手を大切にすること
時間を守ることは、厳しい規則に従うことではありません。
一緒に働く人の時間、任せてくれた人との約束、そして自分自身の目標を大切にすることです。
つなぐコミュニティーズは、一人ひとりが自分で時間を管理し、周囲と信頼を築きながら働けるよう、これからも伴走していきます。
次回予告
次回は「報告・連絡・相談は、助けを求める力」をテーマにお伝えします。困ったときに適切な相手へ相談することは、弱さではなく、安心して働き続けるための大切な力です。
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